シン・組織論①:会社の未来が見えないあなたへ。組織のOSをアップデートしませんか?
シン・組織論①:会社の未来が見えないあなたへ。組織のOSをアップデートしませんか?

先生の顧問先では、最近、社員の皆さんの表情はいかがですか?
社長、なんだかこの頃、組織の歯車がうまく噛み合わない…と感じることはありませんか?
変化の激しい時代の中で、これまで盤石だと思っていた仕組みが、どうも上手く機能しなくなってきた…。社員の顔が、どことなく曇って見える…。会議で新しいアイデアが出なくなり、どこか指示待ちの雰囲気さえ漂っている…。
そんな風に感じたことはないでしょうか。
わかります。その焦りやもどかしさ、そして先の見えない不安…。経営者であれば、誰もが一度は直面する、深く、そして孤独な悩みですよね。
実は、その感覚、決してあなただけが感じているものではないのです。今、社会全体が大きな変化の渦中にあり、多くの組織がこれまでの「当たり前」を見直す岐路に立たされています。
今回は、そんな経営者の皆さまの心の羅針盤となるような、新しい組織のあり方について、少しだけお話をさせてください。
なぜ、これまで成功を謳歌していた「機械」が動かなくなったのか?
多くの企業、特に近代の成長を牽引してきた企業は、まるで精密に作られた「機械」のような組織を目指してきました。効率を最大化し、利益を追求し、計画通りに物事を進める…。その点において、この「機械型組織(達成型組織)」は、まさに最適な組織モデルだったと言えるでしょう。
しかし、その強みは、VUCAと呼ばれる現代、つまり、変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)に満ちた時代において、皮肉にも弱点へと変わりつつあります。
考えてもみてください。完璧に設計された機械は、決められた動きを寸分の狂いなくこなすことは得意ですが、予期せぬトラブルや想定外の変化には、驚くほど脆いものです。現場で何か問題が起きても、承認プロセスに時間がかかり、トップに情報が届く頃には手遅れになっている…なんてことはありませんか? 現場の社員が感じた小さな違和感や顧客からの貴重な声が、分厚い階層の壁に阻まれて、経営の意思決定に活かされない…。これでは、激しい変化の波を乗り越えることはできません。
組織の進化という「旅路」へ:あなたの会社は今、どこにいますか?
ここで、少し視点を変えてみましょう。もし、あなたの会社が「機械」ではなく、一個の「生命体」だとしたら…?
組織を生命体として捉え直すと、全く新しい景色が見えてきます。生命体は、環境の変化に適応し、自ら学び、成長し、進化していきます。そこには、中央からの完璧な指示命令系統などありません。一つひとつの細胞が自律的に動きながら、全体として調和を保ち、目的を果たしていくのです。
この考え方は、フレデリック・ラルーが提唱した組織の進化モデルで、より深く理解することができます。彼は、人類の意識の進化と共に、組織もまた進化の旅路を歩んできたと考えました。
- 衝動型(レッド): 狼の群れのように、個人の力と恐怖で支配される組織。
- 順応型(アンバー): 軍隊のように、厳格な階層とルールで安定を保つ組織。
- 達成型(オレンジ): 機械のように、効率と利益を徹底的に追求する組織。現代の多くの企業がここにいます。
- 多元型(グリーン): 家族のように、文化や価値観の共有を重んじる組織。
- 進化型(ティール): そして、生命体のように、自らが持つ目的に向かって自己組織化し、進化し続ける組織。
どうでしょうか。この旅路に、あなたの組織の姿を重ね合わせてみることはできませんか?「私たちの組織は今、どの段階にいるのだろう?」と、一度立ち止まって考えてみること。それが、未来への大きな一歩となるのです。
新しい時代の組織OSたち:自社に合った組織モデルを見つける
「ティール組織」「自律分散型組織」「ホラクラシー」…最近、様々な組織論が語られていて、正直、混乱してしまう…と感じていらっしゃるかもしれませんね。
大丈夫です。これらの言葉は、それぞれ少しずつ焦点が異なりますが、目指している方向性は(概ね)同じで「より自律的で、目的主導で、変化にしなやかな組織」です。
ここで、それぞれの概念を少しだけ整理してみましょう。まるでコンピューターのOSとアプリケーションの関係のように考えると、分かりやすいかもしれません。
次元 | 伝統的組織(オレンジ) | アジャイル型組織 | ホラクラシー組織 | ティール組織 |
中心的なメタファー | 機械 | プロジェクトチーム | 都市 | 生命体 |
構造 | 階層(ヒエラルキー) | 小規模チーム | サークルとロール | 個人・チームのネットワーク |
意思決定 | トップダウン | チームレベルの自律性 | 憲法に基づく統合的意思決定プロセス | 助言プロセス |
リーダーシップ | 地位に基づく権威 | サーバント・リーダー | ファシリテーター | 分散的/状況に応じる |
- ティール組織:包括的な「哲学」組織を一個の生命体とみなし、「セルフマネジメント(自主経営)」「ホールネス(全体性)」「エボリューショナリーパーパス(進化する目的)」という3つのブレークスルーを核とする、最も包括的な概念です。
- ホラクラシー:具体的な「OS(オペレーティングシステム)」ティールの哲学を実践するための、ルールに基づいた具体的な仕組みです。役職を「ロール(役割)」に置き換え、「憲法」と呼ばれるルールブックに則って運営されます。
- アジャイル:俊敏な「方法論」もともとはソフトウェア開発から生まれた、小さなチームで「計画・実行・検証・改善」のサイクルを高速で回し、スピードと適応性を高めるための具体的な手法です。
- 自走する組織:目指すべき「状態」これらの根底にある、従業員が指示を待たずに主体的に行動し、革新を生み出せる組織の状態を指す、より一般的な言葉です。
これらの概念は、どれが優れているというものではありません。自社の文化や事業内容、そして働くメンバーの成熟度によって、最適な「OS」は変わってきます。大切なのは、これらの違いを理解し、自社に合った形を模索していくことです。
旅の始まりは、いつだって「問い」から
VUCAの時代を生き抜くために、私たちの組織もまた、機械から生命体へと進化していく必要があります。それは、単なるトレンドではなく、必然の旅路なのです。
しかし、焦る必要はありません。完璧なモデルをいきなり導入しようとして、失敗してしまった企業の例も少なくありません。
大切なのは、まず、自分たちの組織のOSが今、どのバージョンなのかを客観的に見つめ、対話を始めることです。
「私たちの組織は、本当に今のままでいいのだろうか?」
「どうすれば、メンバー一人ひとりが、もっと生命力に溢れ、主体的に輝けるのだろうか?」
この問いから始まる対話こそが、あなたの組織の次なる章を紡ぎ出し、未来を生き抜くための、真に自走する企業を創り上げる第一歩となるのです。
あなたの組織という生命体が、これからどんな素晴らしい進化の旅路を歩んでいくのか。その始まりを、そして未来を、私は応援しています。