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なぜ、あなたのチームは「指示待ち」なのか?―すべての土台となる『心理的安全性』

なぜ、あなたのチームは「指示待ち」なのか?―すべての土台となる『心理的安全性』

「どうして、うちの社員は指示待ちばかりなのだろう…」 「もっと主体的に、自ら考えて動いてほしいのに…」
経営者の皆様、このような悩みを抱えて、ため息をついた経験はありませんか?わかります。手塩にかけて育ててきた社員たちが、まるで自分の意志がないかのように、ただ指示を待っている姿を見るのは、本当につらいことと存じます。
会議で意見を求めても、誰も口を開かない沈黙の時間…。新しいプロジェクトを任せたくても、「私にはできません」という消極的な返事…。そんな状況が続くと、「彼らのやる気の問題なのだろうか」「自分のマネジメントが間違っているのだろうか」と、孤独な暗闇の中で自問自答を繰り返してしまいますよね。
しかし、もしその根本的な原因が、社員一人ひとりの意欲や能力の問題ではなく、チームを覆う「ある空気」にあるとしたら…?
今回は、多くの経営者が抱える「指示待ちチーム」という根深い課題の核心に迫り、その解決の糸口となる、すべての土台とも言える重要な概念についてお話ししてまいります。

Googleが突き止めた「成功するチーム」のたった一つの共通点

「生産性の高いチームと、そうでないチームは、いったい何が違うのか?」
この問いに答えを出すため、あのGoogleが莫大な時間と費用を投じて行った「プロジェクト・アリストテレス」という有名な調査があります。彼らは、社内の何百ものチームを分析し、成功するチームの共通因子を徹底的に探りました。
当初は、「優秀な人材の集まりが最強のチームを作る」といった仮説も立てられましたが、結果はまったく違いました。チームの成功を左右するのは、メンバーの能力や経歴、働き方といった要素ではなかったのです。
様々な分析を経て、彼らがついに突き止めた、唯一にして最大の共通点。 それが、「心理的安全性(Psychological Safety)」でした。
心理的安全性とは、一言でいえば**「このチームの中では、何を言っても、どんな挑戦をしても、決して非難されたり、罰せられたりしない」とメンバー全員が感じられる、安心感に満ちた場の状態**のことです 。
考えてみてください。現代は、変化が激しく、過去の成功体験が通用しない「答えのない時代」です 。このような時代に企業が生き残り、成長していくためには、現場の社員一人ひとりが持つ知識や、ふとした瞬間に生まれる斬新なアイデアが不可欠ではありませんか?
心理的安全性は、まさにそのアイデアや本音を引き出すための「土壌」そのものなのです。どんなに優れた種(人材)も、固く冷たいコンクリートの上では芽吹くことができないように、社員もまた、不安や恐れのある環境では、その能力を存分に発揮することはできません。

あなたのチームを蝕む「4つの不安」という仮面

では、なぜ多くのチームでは、この心理的安全性が損なわれてしまうのでしょうか?
弊社でも士業の先生方向けにご案内をさせていただいている、㈱ループス・コミュニケーションズが提供するだがぼく実践プログラムの中では、では、ハーバード大学のエイミー・C・エドモンドソン教授の研究を基に、人々が職場で発言をためらう背景には、次の「4つの不安」が存在すると解説されています 。
  1. 無知だと思われる不安: 「こんな初歩的な質問をしたら、勉強不足だと思われるんじゃないか…」
  1. 無能だと思われる不安: 「この仕事で失敗したら、能力が低いと見なされるんじゃないか…」
  1. 邪魔をしていると思われる不安: 「会議の流れを止めてまで、意見を言うのは迷惑じゃないか…」
  1. ネガティブだと思われる不安: 「反対意見を述べたら、和を乱す厄介な奴だと思われるんじゃないか…」
いかがでしょうか?あなたの会社の会議室でも、このような不安が渦巻いてはいないでしょうか。
これらの不安は、社員たちに**「本来の自分」を隠すための“仮面”**をつけさせてしまいます 。「無知」「無能」だと思われないように「強がりの仮面」をつけ、知ったかぶりをしたり、失敗を隠したりする 。あるいは、「邪魔」「ネガティブ」だと思われないように「いい人の仮面」をつけ、波風を立てないように自分の意見を飲み込んでしまう… 。
この「仮面」こそが、チームから活気を奪い、主体性を削ぎ、「指示待ち」という深刻な病を生み出す元凶なのです。

すべては、リーダーの「自己開示」から始まる旅路

「心理的安全性が重要であることはわかった。しかし、具体的にどうすれば…?」 そう思われるかもしれません。大変ですよね。組織の文化を変えるというのは、一朝一夕にできることではありません。
しかし、希望はあります。この変革の旅路は、たった一人の、そう、経営者であるあなた自身から始めることができるのです。
そして、その最初の、最も勇気のいる一歩は、リーダーが自ら「仮面」を外し、弱さを見せること、つまり「自己開示」だとされています 。
完璧なリーダーを演じる必要はありません。時には自分の弱さや失敗、悩みを率直にメンバーに打ち明けてみてください。「実は、このプロジェクトの進め方に悩んでいるんだ。みんなの知恵を貸してくれないか」と。
リーダーが「弱さ」という人間的な部分をさらけ出すことは、「この人の前では、自分も完璧でなくてもいいんだ」という安心感をメンバーに与えます。その安心感が、メンバーの自己開示を促し、信頼関係のループが回り始めるのです 。
もちろん、これは簡単なことではありません。しかし、固く閉ざされた扉を開く鍵は、いつも私たちの内側にあると、私は確信しています。
あなたのチームが「指示待ち」の集団から、一人ひとりが主体的に輝く「自走するチーム」へと変貌を遂げる。その感動的な旅路の第一歩を、今日から踏み出してみませんか?
エナウトパートナーズは、その挑戦を、心から応援しています。